
著:たくみ けいすけ
少年時代
第02話 うなぎ
私が初めて手にした魚は、鰻である。丸々と太った体を重々しくくねらせ、鰻は水中から上がってきた。
小学5年生の夏休みだったと思う。
自宅のそばには田畑が広がり、あまり綺麗だとは言えないが、川が流れ、当時はこれと言ってする事もなく、友達とよく釣りに出かけた。
友達にはよくフナやハヤが掛かっていたが、私は殆ど釣れた事がなかった。
自転車をこいで出かける事の方が楽しく、自分だけ釣れなくても何も思わなかった。
だから、なおさら突然の鰻の出現にびっくりしたのをよく覚えている。
自分から進んで釣りに行く事はなかったが、誘われて竿を出せば、たまには私のハリにも魚が掛かってくれるようになった。
夕方、凧糸にハリを結び、ドジョウをエサにして川に投げ、次の朝早く糸を手繰れば鰻が掛かっていた。
美味しそうな魚を手にして、少々得意気だった。
海釣りもしてみたが、釣れたためしはなかった。
その頃、私が使っていたリールは、現在のフライリールのような形をしていて、スピニングロッドに取り付け、キャストする時は、90度回転させて手を放せば糸が飛んでいくものだった。
うまく操作する事ができず釣りにならなかった。
投げ釣り竿の先に付けた鈴がよく鳴ってたくさんの魚を釣り上げる友達や、腰まで川の中に入って大きな雷魚を手掴みにしてしまう友達を見るたび、私はだんだん羨ましく思うようになった。
多分、私は周りの友達から、下手くそだと思われていただろうし、自分でも内心気づいていた。
中学、高校の頃は、思い出したような時に、川に出かけたがパッとしなかった。釣り以外のいろんな物に興味を持つようになっていた私にとって、遊びの中から、数年間釣りは完全に消えてしまっていた。
しかし、あの時の鰻を私は今でも鮮明に覚えている。