待ってろよ、魚たち。
著:たくみ けいすけ
 
少年時代
 第04話 就職
写真007大学を卒業すると私は、教師として福岡県は筑豊の地に赴任した。

地図を頼りに、初めて訪れる土地を勝手に想像しながら車を走らせた。

腹が減ったので、烏尾峠という所の一角にあるうどん屋に立ち寄ろうと、車をバックさせ駐車しようとした時、私は眼を奪われた。

『青春の門』で有名な香春岳が盆地の向こうに巨大な切り株のような形相をして踏ん張っていた。

私は、この山を毎日違った角度から眺めながら、5年間をこの地で過ごした。

職場のすぐ裏に建っていた空き家をお世話していただき、私の教育労働者としての日々が始まった。

朝が弱い私にとって、数秒で出勤できるという利点は、他の何物にも替えがたいものであり、登校した子供達が交代で玄関を叩いて、布団にもぐり込んでいる私を起こしに来てくれた。

ただ、休日の朝早く遊びに来られるのには、少々参った。

そして、一日一日が季節を感じさせながら、ゆっくりと過ぎていった。平凡な時を過ごしていると、急に何かしたい衝動にかられるものである。

しかし、知人とドライブに行ったり、パチンコをしたり、酒を飲むぐらいしか、する事を私は見つけだせずにいた。
写真008
私の住む家は、英彦山川という河川の土手下に位置し、春になると菜の花が咲き乱れ、散歩を楽しむにはもってこいの場所にあった。

川土手に沿って車道が南北に走っていて、釣りを楽しむ人をよく見かけた。

子ども達と会話していても、ときどき父親と魚を釣りに出かけた時の事を嬉しそうに教えてくれる。

私の脳裏にも幼い頃のかすかな思い出が蘇ってくる。


目の前を「釣りに行きましょう」と言わんばかりに川はゆったりと流れていた。

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