
著:たくみ けいすけ
1985年
第18話 前進
ハンドメイドルアーをベストにしまい、私たちは紫川へ通い続けた。6回程、2月末から3月中旬にかけて、住友金属前から小倉井筒屋付近を主に攻めてみたのだが、なかなかそう簡単にヒットしてはくれなかった。
釣れる事実は確認済みだったので、私と会長の気持ちは決して揺らぎはしなかった。
3月9日、会長と私は、いつものように紫川の住友金属前に立っていた。
ふと見ると、私たちよりも先にルアーをキャストしている一人の青年がいた。
私たちも10m程離れた地点に構え、対岸に向かってキャストをくり返した。
小雪の舞う寒い夜だった。
しばらくすると青年にヒット。
そしてまたヒット。
私たちも俄然やる気が沸いてくる。
しかし、ノーヒット。
また青年にヒット。
多分、悔しさの余り、私の頭から煙が出ていたんではないだろうか。
またもや青年にシーバスがヒット。
その光景を目の当たりにして、私は頭蓋骨をハンマーで殴られたような気がした。

大きなシーバスではなかったが、サイズなど問題ではない。
目の前で釣れているという現実が、私たちにとって大問題なのである。
シーバスは私たちから10mの距離まで接近しているのである。
シーバスはそこまで来ているのだが、悔しさだけを家に持ち帰っても何にもならない。
帰宅後私は、この日の潮とヒットの時刻について簡単に整理してみた。
この日は大潮後の中潮で、満潮が23時21分、4匹のスズキが掛かった時刻から考えると、どうも満潮を挟んで前3時間・後2時間がベストの時間帯ではないかと私は判断した。
3月17日にも、釣れる時間帯を想定して、会長と私は住友金属前を訪れたのだが、だめだった。
しかし、「もうそこまで魚は来ている」という強い予感を私たちはお互いに感じていた。