待ってろよ、魚たち。
著:たくみ けいすけ
 
1985年
 第19話 絶好調
写真037その2日後、予感は的中し、私は感動の夜を迎えた。

この日の日記に、私はこのように記している。


「とうとう出た! 50cm・49cmのシーバス。

3月19日火曜日。

感激の一言に尽きる。

何十回となくスズキを狙って釣行。

連続0、0、0……。

ハンドメイドルアー、試行錯誤の末42個目。

努力の甲斐あって、やっと50と49cmを手中に納めた。

涙が出るほど嬉しかった紫川。

これで釣れる時間帯も分かった。

この日は大潮前の中潮、満潮は20時34分、水温11度、朝は雨。

ヒットタイムは21時と21時40分、ヒットルアーはM42F。

ラインは12lb。

感激で寝れそうにない」


私は、長い息苦しいトンネルを抜けたような気がした。

そして、間違いなくこの上ない喜びが私を待っていた。

張り詰めていた気持ちも和らぎ、私は穏やかな朝を迎えた。

私は当時カメラを持っていなかったので、「ヤマメ研究会」の知人に頼んで記念の写真を撮ってもらった。

その彼も「よく釣れたなぁ」というのが、2匹の魚を見ての第一声だった。

また、魚を釣った夜、私たちの隣で一生懸命ロッドを振っていたフライマンのことを私は覚えている。

この光景を私は日記に、「風もあり、何回もロッドを振るのは疲れるだろうな」と、付け加えている。

その後私も同じような事を自ら体験していくとは、この時、想像もしなかった。

実はこの年、私の妻は妊娠していて、実家に帰って出産の準備をしていた。
写真038
すでに、出産予定日も過ぎ、初めての我が子との対面を意識してか、私は落ち着かない日々を送っていた。

30人程の職場のみんなは、この事を知っていたので、電話が鳴るたびにソワソワしている私の様子の滑稽さを、笑っていたようである。

3月22日、この日は、私にルアーフィッシングの楽しさを教えてくれた彼と二人で紫川を訪れた。

勿論、住友金属前である。

潮も良く大潮で、満潮が22時9分。

3日前、ちゃんと私は2匹の魚を釣っていたわけだし、この潮でシーバスは必ず川を上るはず。

絶対の自信と期待を胸に、私たちはルアーをキャストし始めた。

21時3分、待望の魚が彼のルアーにヒットした。

ルアーは、オレンジヘッドの11cmのシンキング。

足元でのファーストヒット。

彼は満面の笑みを浮かべ、気分は晴々としていた。

同じ苦しみを味わってきた友として、彼の心境を推測するのは、いたって簡単であった。

彼と私は握手をかわし、再びキャストに熱が入った。

そして21時50分、私の宝物M42Fにシーバスがヒット。

これが私の好調の証というか、自信の証明とでも言おうか、ハンドルを5〜6回転させた時、ガツンときた。

60cmの美しいシーバスの写真を撮り、私と彼はお互いの健闘をたたえ合った。

有料道路から見える北九州の夜景を車窓からのんびり眺めながら、私達は帰路についた。

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