
著:たくみ けいすけ
1990年
第49話 減少
池田湖での私たちの収穫は、魚を目撃し、この湖には確かにマス族が棲息しているという事実を確認することができたということだった。それが分かっただけでも、気合いの入れ方がだいぶ違ってきくるし、きちんとした目的意識も持てるようになれる。
まあ、池田湖については、次回に期待するとして、当面のフィールドは、私にとって悩みのに種になってしまった江川ダムしかなかった。
この年の1月14日、日曜日。
私は、池田湖の魚のことを思い起こしながら、見慣れた景色を横目にしながら、ダム湖へ車を走らせた。
済んだ水の状況を前にして、私は池田湖で使用したミノーをラインに結び、ロングキャスト。
思えば、以前私は、ペアリングやボイル状態のマス族を、この人造湖で確認している。
もっと自信を持ってルアーをキャストすべきなのか。
大きなライズが2回、午後1時と2時半に起きる。
しかし、ルアーの射程距離を遙かに超えていた。
2月12日、月曜日。
この日も2回ライズを確認するが、リアルミノーやスプーンには全く反応がない。
水鳥の鳴き声が、嘲笑っているかのように私の耳を刺激した。
3月11日、日曜日。
風もなくライズもない。
ましてや魚の気配など、何処にもない。
水面は一枚の巨大な鏡となり、ルアーの着水音と、それに伴う小さな波紋だけが妙に淋しかった。この間、私はおよそ一ヶ月に一度のペースで江川ダムを訪れていた。
魚が釣れないのは、私にとって、すでに慣れっこになった感があるのだが、少々、気になることがあった。
それは、釣り人の数が減少しているということである。
もう少しはっきり言うと、マスを狙ってスプーンをキャストしたり、フライロッドを振っている人の姿を徐々に見なくなったのである。
ワカサギ釣りや、ワームを使って深場のブラックバスを誘っている人なら、ときどき目にするものの、私と同じようなことを考え実行している人に巡り会えない。
これは、この3日間に限って言っている訳ではなく、確かにこの江川ダムが、マス族との対面の場として、ルアー・フライマンから敬遠されてしまっているように思えるのである。
釣れた魚の数とアングラーの人数は、どうも比例しているようである。
江川ダムは、一気にこの減少傾向をたどってしまうのだろうか。
しかし、私は春から初夏にかけて、宿敵江川ダムへ通い続けた。
所謂執念みたいなものである。
だが、偉そうに言うのも可笑しい。
家庭の事情から、余暇に使える時間を割り出すと、このダム湖くらいしか、釣りに行ける場所が私には見つからなかっただけなのである。